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食品
2020/9/01

クラフトビール醸造所・マイクロブルワリー開業成功のためのポイント

株式会社船井総合研究所  久嶋裕介

クラフトビール醸造所・マイクロブルワリー開業成功のためのポイント

 

1.はじめに

クラフトビール醸造所・マイクロブルワリーは、2020年当初には400箇所を超え、クラフトビールがブームとして過ぎ去っていくのか、それとも日本に1つの産業として残っていくのかのターニングポイントを迎えています。

近年のビール市場を振り返ると、2018年のビール類国内総出荷量は14年連続で過去最低を更新し続けるなど、ビール消費量が減少しています。その反動として、大手ビールメーカーの“これまでのビール”から「クラフトビール」として新たな価値が見出され、全国各地にクラフトビール醸造所が続々と設立されています。

図のようにクラフトビール市場は堅調に販売量を増やしています。

図1
図です
資料:地ビール等製造業の概況(国税庁)より作成

2.クラフトビール醸造のノウハウ

クラフトビール製造の工程には、以下の大きく5つの流れがあります。
1)レシピ設計
どんなビールを造るかのコンセプト設計、そしてその製造に必要な原材料を選別します。ビールの主原料は基本的に「水」「モルト(大麦の芽を出させたもの)」「ホップ」「ビール酵母」です。副原料としては「フルーツ」「ハーブ」などは近年人気であり、「フルーツビール」というカテゴリーが生まれてきています。
2)麦芽粉砕
ビールのもととなる大麦を発芽させた「モルト(麦芽)」を粉砕します。モルトに含まれるテンプンを抽出させた麦汁をつくっていきます。
3)仕込み
粉砕したモルトとお湯を混ぜ、かく拌します。こうすることで、酵素が働きモルトの「デンプン」が「糖」へと変化していきます。この出来たものをろ過することで「麦汁」となります。この麦汁にホップを入れて煮ていくことで、香りや苦みが加わります。
4)発酵
熱交換で冷やされた麦汁を発酵タンクに移し替え、酵母を加えます。このビール酵母により麦汁に含まれる糖分は分解され、アルコールと炭酸ガスが生まれます。ビールには、大きく「エール」と「ラガー」がありますが、この違いは基本的に酵母に依存します。「エール酵母」を使用するとエールビールが4日間ほどの発酵の後に、「ラガー酵母」を使用するとラガービールが7日間ほどの発酵の後にできあがるわけです。
5)充填
発酵が完了したビールは、しばらくの期間落ち着かせたのちに缶や瓶、樽に充填します。充填前に濾過、充填後に火入れすることで賞味期限が伸びますが、日本では無濾過を特徴としたクラフトビールが多数あります。無濾過の場合、流通や管理に気を使う必要がありますが、日々味が変化していく唯一無二のビールができあがります。

日本ではアルコール1%以上の製造は違法なため、ビール醸造の技術は、税務署からビール醸造免許がおりているブルワリー(ビール醸造所)で勤務、研修しなければ体得することはできません。

3.クラフトビール醸造所の開業に必要な免許・資金

クラフトビールの製造には、「発泡酒製造免許(もしくはビール製造免許)」が必要となります。醸造免許をとるには、経営基盤や製造技術、製造設備の有無などが問われるのは当然ですが、それに合わせて「需給調整要件」を満たす必要があります。「需給調整要件」とは下記のとおりです。

「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要がある」の意義
 法第10条《製造免許等の要件》第11号に規定する「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要がある」とは、新たに酒類の製造免許又は販売業免許を与えたときは、地域的又は全国的に酒類の需給の均衡を破り、その生産及び販売の面に混乱を来し、製造者又は酒類販売業者の経営の基礎を危うくし、ひいては、酒税の保全に悪影響を及ぼすと認められる場合をいう。
出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/2-08.html)

つまり、発泡酒製造免許を取得したい場合「年間6,000L(ビール製造免許は60,000L)の販売先があるのか?」ということに対する明確な答えをもった企業でないといけないということです。6,000Lを330mlの瓶で換算すると約18,200本、月に1,500本になります。この数をどのように販売するのかを明示する必要があります。飲食店併設で販売するのであれば、1人1L飲んでもらえた場合で、年間6,000人の来店、休みなしで営業して1日平均17人のお客様に来店してもらわなければなりません。

上記の要件をクリアするためにも、クラフトビール醸造所の開業を始める際には、まず自社の近隣商圏でクラフトビールに興味をもってくれる人がいるのか、売れる販路があるのかを見極める必要があります。試しに他社のクラフトビールやOEM製造したビールを売ってみて判断するのも有効な手段です。

実際にテスト販売が好調で、自社製造を検討する場合、醸造所開業にかかる費用はどのくらいでしょうか。土地・物件は除き、醸造自体は大きな寸胴鍋がいくつかあれば可能です。DIYで造ってしまえば、500万円も必要ないでしょう。しかしながら、これで品質を安定したビールを造り続けるには相当な醸造技術をもった人が必要です。素人が数か月の研修後に開業するには不安が残ります。一定の品質を担保するためにも、職人の勘所が必要な技術や不要な反復作業は自動化できる設備導入が必須です。
話を戻すと、仕込み設備、タンク、樽洗浄機、ケ具樽などを総額1,000万円~で十分に良い設備導入が可能です。1990年代の第1次地ビールブームの時、ヨーロッパからの設備購入で1億円以上の開業資金が当然でしたが、今では1/5以下の初期投資で事業スタートが可能となっています。設備の詳細についてご興味のある方は、最下部からお問い合わせください。

4.クラフトビール醸造所開業の流れ

クラフトビール醸造所の開業の際には上述した通り、まず近隣商圏にクラフトビールの需要があるのかを知る必要があります。では、クラフトビール、地ビールの需要とはどういうところにあるのでしょうか。
地ビールというと、観光地に位置するところが多くあります。その地で造られた独自のビールを飲みたいという需要があるでしょう。それをお土産として買う方も多いです。
観光地に拘らず、クラフトビール好きな方が多い商圏であれば、普段から常用できるクラフトビール専門店や酒店での販売という需要があります。
さらに、ご当地のビールというポジションを獲得できると、地元の方や自治体からも評価してもらえることで、地域内での需要喚起に繋がっていきます。
既存で飲食店、酒販店、観光業、商業施設が近年クラフトビール事業に新規参入している理由は、このような需要があるからです。

次に製造の中心となる醸造担当者の採用・研修についてです。そもそも、醸造研修先として研修を受け付けているブルワリーが少ない状況です。あわせて、最初の研修先が今後のビールの品質・味・考え方を決めます。醸造所の一生を左右するわけですので、近いからという理由だけで選ぶのではなく、あらゆる角度から検討しましょう。
弊社でもクラフトビール醸造の研修先をご紹介させていただいております。ご興味のある方は最下部からお問い合わせください。

最後に免許申請が必要となります。まずは予定地の税務署に相談をしていただき、必要な書類を作っていかなければなりません。経営基盤にかかわる書類はもちろん、醸造設備の見積もりや製造技術の有無(製造研修済みかどうか)、どんなビールをどのようなレシピで造るのか等々。特段難しい資料ではありませんが、何度も税務署員と面談し手間をかけて作成していくことになります。
また、醸造免許は国税庁まで申請を通すため、最低でも4ヵ月(平均で6~12ヶ月)必要となるため、醸造所OPENの見込みをたてる際には注意が必要です。

5.ビジネスモデルの解説・成功事例

ここまで解説してきたクラフトビール醸造所の価値とは何でしょう。成功しているクラフトビール醸造所は何をしているのでしょうか?
それは「いつでも・どこでも・誰にでも」ではなく、「今だけ・ここだけ・あなただけ」を売り物にして、ビールに付加価値をつけていることです。醸造担当者と直接話せる、今ここでしか飲めない限定ビール、私好みの甘酸っぱいビール、という高付加価値のビジネスだからこそファンがついてきてくれます。
また、収益面ではマイクロブルワリーであってもビールの原価が酒税を入れて1Lあたり約300円、販売価格が1,500~2,000円です。ビール製造所に飲食店、販売店を併設させ、営業マンをもたない製造直売することで、ビールの原価率20%未満・人件費30%・営業利益率を20%が可能です。このように、製造直売を基本とすることで非常に高収益な魅力的な事業となります。まず利益を出せる状態になることが先決です。

【成功事例紹介①】
・駅前商店街立地に新規参入での成功
醸造・キッチンで8坪、客席13坪の小さな店舗で満席のクラフトビール専門店A
都内路地裏の3等立地で、クラフトビール醸造パブ(ブルーパブ)に参入し、夜営業のみで営業利益率20%越え!投資回収1年1ケ月を達成する。

【成功事例紹介②】
・観光立地に新規参入での成功
観光地で売店・飲食店で驚異の単店年商1億円超+卸のクラフトビール専門店B
醸造・飲食店ともに新規参入にも拘らず、ブルーパブを展開する。
観光地クラフトビールで飲食だけでなく土産需要による事業展開で盤石な事業の柱をつくる。

6.まとめ

以上「クラフトビール市場・醸造所開業のポイント」についてご説明し、そのビジネスモデルをご紹介しました。クラフトビールという今伸びる市場において、マイクロブルワリーだからこそできる高付加価値のビール造り、製造直売が参入の大きなメリットになります。
醸造所開発支援を行っているコンサルタントとしては、日本各地に強い競争力、高い商品力をもったビールメーカーが立ち上がっていくことがクラフトビール業界の発展のためにもなると考えております。そのための醸造所開業のトータルサポートを弊社で行っておりますので、ご興味のある方や既存事業との親和性について気になる方は、ぜひお気軽にお問合せください

担当者
久嶋裕介

金沢大学経済学類在学中に酒蔵、米農家と連携し日本酒を創るプロジェクトに参画。
株式会社船井総合研究所に新卒で入社後は、食分野だけでなく、介護・福祉業界にて新規事業立上げのコンサルティングを行う。
現在は、酒造を始めとする食品メーカーでの売上・利益率アップのためwebマーケティングの視点からサポートをし、集客の最大化において多数の実績を上げている。

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