食品業界についに訪れる「HACCP義務化」 | 船井総研 フードビジネス支援部

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コンサルタントコラム

給食
2018/8/01

食品業界についに訪れる「HACCP義務化」

株式会社船井総合研究所 チームリーダー / マーケティングコンサルタント 吉澤 恒明

食品業界についに訪れる「HACCP義務化」

「HACCP」の認証取得がついに今年、正式に義務化が決定されました。
これは、全国の食品製造業に関わる企業様方にとって大きな変化の一つです。
 
「ついに来たか・・・」「自社でも対応できるだろうか・・・?」
そんな不安や疑問を抱える経営者様も、決して少なくはないでしょう。
 
今回の義務化のターゲットは、もちろん給食業だけではありません。
食品の製造・加工業者をはじめ、飲食店などの調理業や、スーパーなどの販売業も義務化の対象となります。
 
農林水産省の「食品製造業におけるHACCPの導入状況実態調査」という統計結果によると、現状での食品関連業者におけるHACCP導入率は「21.3%」。実に業界内の約8割の企業様が変化を強いられることになります。
 
このハードルを越えるに当たって最も重要なこと。それは「HACCPとは何なのか?」をまず知ることです。

多くの中小企業経営者が持つ「HACCP」に対する間違った認識

そもそも「HACCP」とは何なのか?
「H」azard「A」nalysis(ハザード アナリシス=危害要因分析)
・・・「PRP(一般的衛生管理点)」か「CCP(重要管理点)」かを分析。
  原材料の受入や保管、加熱冷却などの各プロセスでどんなリスクの可能性があるか明らかにすること。
「C」ritical「C」ontrol「P」oint(クリティカル コントロール ポイント=重要管理点)
・・・「ここだけは守らなければならない」という点を明らかにして予防する方法を考えること。

横文字や定義が並ぶと何やら複雑ですが、要点を圧縮すると
「危険な所を見つけ出し」「しっかり管理する」
ということなのです。

よく経営者様から
「設備投資に多額な資金が必要になるのではないか?」
というお声を聞きますが、これは厳密には誤りです。

HACCP認証工場というと、最新の設備が整っていたり
敷地も大きくて立派な工場・・・というイメージがあるかもしれません。

ですがHACCPの本質は「設備論」ではなく「管理手法論」です。
最低限の改修等は必要ですが、あくまでも一般衛生管理が基本です。日頃実施されている「衛生管理」を「見える化(目に見える形で記録・確認)」することが大事なのです。

「HACCP認証取得」がもたらす経営へのインパクト

では、HACCPを取得できたとして、果たしてどのようなメリットがあるのか?

ただ義務として課せられ面倒事が増える、という訳ではありません。むしろ、そこに今後の「ビジネスチャンス」があります。

一つの事例として、とある給食会社様の導入事例をご紹介させていただきます。
年商規模は10億円超。2008年にHACCPを取得し、運用し続けてきました。リーマンショック等を経ても売上は毎年伸長し続けており、現在では売上、経常利益高ともに10年前当時の2倍近くにまで成長しています。

この企業様が、約10年間の「HACCP」実践の中で得られた効果は、大きく3つ。

1) 売上増加
①元々の基幹事業であった弁当給食サービスの「シェア集中」が加速した
②某大手企業からの「OEM案件受注」、公共施設案件の受注
③新しい高齢者市場開拓に向けた「新商品開発・展開」

2) 収益性向上
①マニュアル整備、ルールの明確化等による「作業効率」の向上
②衛生管理力向上による工場多毛作化の実現=「稼働率」の向上

3) 人材力向上
①仕組み化が進むことによって属人的な「職人芸」体制から脱却、
組織の若返り化
②定期会議等を含む、従業員教育体制が整うことによる人材育成力、定着率向上

おそらく今後、食品関連業にまつわる事業者数は「減る」ことになります。
HACCP「非」認証企業にヒト・モノ・カネが集まりにくくなることが予想されるためです。

逆を言えば、HACCP認証企業に、そういった「資源」や「受注機会」が、今後ますます集中していきます。

法律によって不可避に決定された「HACCP義務化」ではありますが、ある意味「必要必然」と捉え、これからのビジネスチャンスに繋げていく必要があるようです。

あなたの選択でHACCP取得コストは天地の差ほど変わる!
「低投資で始める!HACCAP導入の3つのコツ」

そして、HACCP導入を検討される経営者様の、もう一つのよくある悩み。それは「一体いくらかかるのか?」ということではないでしょうか。

前述の通り「全くの投資ゼロでHACCP認証を取得する」というのは不可能です。最低限の投資は必要となります。
ただし、その投資額がどれほどまで上ることになるか?は
実は、経営者様の「選択」次第で大きく変わることになるのです。

なぜ、何によって変わるのか?
結局どれだけ投資が必要になるのか?
3つのポイントにまとめてお伝えさせていただきます。

まず大前提として、HACCP認証を取得するためには
外部機関への委託が絶対条件となります。
認証を得る過程で、外部機関による「審査」が必要となるためです。

このHACCP認証を「審査」を実施する機関。
これが実はいくつか種類があり、それによっても内容と、必要金額は異なります。

例えば厚生労働省や都道府県等の行政、業界団体、地方自治体、民間企業など。
「HACCP認証」に対する明確な価格基準というのは設けられておらず、ある意味「自由価格」の市場です。その為、上記のうちどの機関に委託するかによって必要なコストが異なってくるのです。

さらに、審査を通過していくための指導を行う専門コンサルタントも存在しますが、それによっても指示・指導内容も厳密には異なります。同じような基準下の指導でも、設備改修・投資を積極的に求めるような所もあれば、できる限り投資を抑えられる形での提案を中心とする機関もあるのが実際です。

また近年ではWEBを活用した遠隔教育システムを導入するような専門コンサルティングサービスも出てきています。そのようなサービスを利用することでも、投資コストを抑えていくことが可能です。

そのため、まずお伝えしたいポイントは「①どの認証機関で審査を受けるか」、「②どの専門コンサルタントへ支援委託するか(そもそもコンサル依頼するか?)」を慎重に選ぶべき、ということです。初めて認証取得にチャレンジされる際は、事前に、インターネットや知人等からの情報収集を行い、比較し、検討、決定してください。

また、「何」の認証を得るか?によっても投資コストは大きく変わります。
「HACCP」の他に「ISO22000」というのも、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
「ISO22000」に対する詳しい説明はここでは割愛しますが、簡単にいうと「HACCPの上位互換」のような衛生管理基準です(HACCPの内容を包括しています)。
HACCPとの違いを簡易的に示すならば、

■HACCP・・・“内部管理” ・・・自社内における汚染発生リスクを防止・排除する
■ISO22000・・・“内部+外部管理” ・・・自社内だけでなく、外部=取引先内等における汚染発生リスクをも防止・排除する

といった内容で、そのため管理領域や対象が拡がるので、上位基準として認知されています。

この「ISO22000」の認証を取得するに当たって、JABという国際規格への登録が必要になるのですが、この登録料に500万円を要します。

また、年会費で1,000万円単位、施設改善要求等が求められるケースが多いことから、ざっと見積もっても2,000万円~3,000万円以上の投資を、最低限要すると言われます。

一方HACCPは機関が実施する審査費用等でミニマム50万円程度から、その他専門コンサルも導入したとすると、その諸経費含めトータル300万円程度の投資から導入が可能です。
コストを最小限に抑えるのであれば、専門コンサルタントには委託せず、社内教育だけで完結させて審査に臨む、という方法論もありますが、社内リソースが十分でない場合は、委託するのが良いでしょう。

このように、ISO22000は国際的な信用度も高いですが、その分、求められる基準も高く、より多額の投資コストを要します。ですので、基本的には「まずHACCPを取得し、後にISO22000を取得する」といった、段階的なチャレンジをお勧めいたします。

したがって、低投資で始めるためのもう1つのポイントは③どの認証取得を目指すのか?を判断する、ということです。


2020年以降も選ばれ、生き残り続ける企業であるために

いかがでしたでしょうか。
ご覧になっていただいて分かる通り、本稿でお伝えするのはあくまで「これからHACCP認証取得を目指す方」、そして「目指してはいるもののよく分からない方」が主な対象です。
まずはそんな方々に、適切な判断を行い、認証取得を進めていただくための情報を手にしていただければと思い、本稿を執筆させていただきました。

認証取得を得るに当たっての具体的な基準、項目等については、専門機関からの指導を仰いでいただくことをお勧めいたします。何故ならそれらは非常に多様で、現場によって求められることも様々であるからです。

否が応でも食品業界の管理基準のレベルを上げなければいけない時代になりました。
2020年までの数年間の取り組み次第で、企業間で大きな差が開いていくことが予想されます。その分かれ目の一つとなり得るのが「HACCP」です。
本稿にお目通しをいただいている勉強好きな皆様には、ぜひ適切な情報収集と判断をいただき、今後も永続的に成長し続けていかれることを、切に願っております。
担当者
チームリーダー / マーケティングコンサルタント
吉澤 恒明

近年急成長市場となっている「シニア向けフードビジネス」専門コンサルタント。
 
DMやWEBを駆使したダイレクトマーケティングモデルで、クライアントに対して年間数億円規模の業績アップに貢献。特に、新規事業参入案件の数は過去50件以上。
 
ゼロからの事業戦略構築から計画策定、営業、スキーム構築、販促ツール作成、営業マン強化など、立ち上げから実行、展開までを全面的に支援するのが得意。
 
「おいしい『食』を提供する強い企業づくり」を目指し、年間300日以上をクライアントの支援や行脚に費やす。

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