赤字給食会社が立ち上げ3年「普通食」のみ介護給食で年商3億円営業利益い率20% | 船井総研 フードビジネス支援部

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コンサルタントコラム

給食
2018/9/12

赤字給食会社が立ち上げ3年「普通食」のみ介護給食で年商3億円営業利益率20%

赤字給食会社が立ち上げ3年「普通食」のみ介護給食で年商3億円営業利益率20%

産業給食で赤字に陥っていた私たちが介護マーケット参入で高収益化できた理由

介護施設の高齢者用の食事といえば、刻み、ミキサー、減塩、カロリー食等製造が難しい加工食や栄養調整・病態食は必須と思われがち。

そんな中、難しいことは一切やらず普通食1本だけの製造販売で、たった3年間で年商3億円、営業利益率20%まで成長。これだけ聞いても、耳を疑う経営者の方も多いのではないでしょうか?

今回の介護給食業繁盛レポート2018では、市場縮小が進む産業給食から、時代のニーズに合わせたビジネスモデルを確立し、介護給食事業を展開している株式会社セイブの成功の要因に迫ります。
株式会社セイブの情報
福岡県久留米市を中心に、一般法人向けの弁当給食を中心に展開。
元々は弁当製造・販売業に特化していたものの、産業給食市場の衰退、深夜・早朝時間帯の労働人員確保の困難化、などの時代変化を受けて「クックチル」製造体制を導入。新たなマーケットとして「介護施設向け配食サービス」を2015年10月にスタート。3年間で年商規模3億円、営業利益率20%と、高収益事業へと成長。九州エリアシェア一番化を目指して更なる成長を目指している。
本レポートの見所

Episode.1
父の会社の倒産。どん底生活から地域一番弁当給食企業に至るまで

-貴社は創業35年以上の給食会社であるにも関わらず、近年、目覚しい成長を遂げられております。まず最初に、貴社の起こりや会社の歴史についてお聞かせください。

私は二代目経営者です。先代である父親が量り売りの惣菜小売店の商売を始めたのが会社の起こりです。一時期は27店舗まで店舗展開していたものの、景気の低迷や競合の台頭により、業績は急激に低迷。私が18歳の時に父親の会社は倒産しました。家族は借金に追われ、山の中に逃げ込んだこともあります。
この経験からか、「会社は何があっても、絶対に潰してはならない」ということを常に考えるようになりました。
株式会社 セイブ 代表取締役 田中 憲治氏
-壮絶な青年期だったのですね・・・。それから、現在の会社に至るまでには、どんな経緯があったのでしょうか?

父の会社が倒産して以後、私は隣県の熊本の惣菜会社へ丁稚奉公に出ていましたが、ある時転機が訪れました。父の中学時代の恩師が、なんと土地と1,000万円の資金を貸してくれたのです。それらを元手に私は昭和55年、有限会社セイブを設立。これが今の会社のスタートでした。

業績は一転して急成長、しかしその矢先・・・深刻化する主力事業の業績不振

弁当・量り売り惣菜の小売業から始まり、仕出し事業、産業給食事業、在宅の高齢者向けの弁当宅配、学校給食等の事業も付加し、業績はどんどん伸びました。次第に小売業は縮小して給食業がメインとなり、食数も1日7,000食以上、会社の年商規模は9億円余りになっていました。

-ドラマのような逆転劇ですね。

ところが、転換点になったのが5年前のことです。
当時、旧工場が手狭になってきたこともあり、新しく出来た工業団地に、数億円の投資をかけて新工場を設立しました。当然、今後も更に事業拡大していくことが前提での投資でした。ところが、主力事業の産業給食業が、急激に衰退傾向に陥ったのです。

業績低迷の背景には、産業給食市場の縮小、食材原価や従業員の最低賃金、競合との相次ぐ値下げ合戦等がありました。

そんなマイナス要因が重なり、当初見込んでいた計画よりも資金繰りが大幅に悪化。産業給食業は元々利益率は低く、売上があっても手残りは少ない商売です。そこに工場投資にかかった多額の借入金返済もあって、当時営業利益ベースで赤字に陥りました

「会社が潰れる」

それだけは、絶対に避けなければいけない。そんな思いで、新しい方向性を模索し始めました。

Episode.2
“介護市場”への新たなチャレンジ 迫られる“断捨離”の選択

-再起に向けた事業戦略のアイディアは元々あったのですか?

次なる伸び代は「介護施設の市場」ということは、前々から考えていました。しかし、事業立ち上げまでなかなか踏み切れずにいました。

その理由の1つは工場の製造キャパシティの問題です。当時、主力の産業弁当給食を始め、6つの事業が動いていました。同じような物を作っているようで、それぞれ全く別の献立、別の製造ラインを動かす必要があったのです。

もう1つの理由はゼロからの立ち上げで本当に売上を獲っていけるのか?という不安でした。いくら成長市場とはいえ、売上をつくる方法論が確立できなければ1円にもなりません。これまでは全く違うターゲットに対して、どんな商品を、どんな風に売れば良いのか?は正直未知数だったのです。

今後の成長を採るためには、何かを捨てなければいけない。でも新しい事業で本当に売上をつくれるのか?もし上手く行かず、さらに資金繰りが悪化したら・・・?

そんな中堂々巡りの中、船井総研から一通のDMが送られてきました。

10年後を見据えて今、何を取捨選択すべきか?「1.5億円」を手離す苦渋の決断

3年前に船井総研から送られたDM介護市場に踏み切るきっかけに。

そこから学んで知った事例は、まさに自分が求める情報でした。どんな形態の、どんな商品が「介護施設」のマーケットで需要があるのか?「飛び込み営業完全ゼロ」でどのように顧客開拓をし、業績を伸ばしてきたのか?

何千万円も資本がある大手企業ではなく年商規模はむしろ自社よりも小さい、同じ九州の会社の事例です。

-同じ九州の、地場給食会社の事例だったことも、大きかったですね。

そうですね。「これならイケる!」と拡大戦略のイメージがついてきたことで、私は当時年間売上1.5億円程だった「仕出し事業」を捨てる決断をしました。

労働環境改善も課題になっていた当時、土日祝日は稼動が集中し、平日はほとんど稼動がない・・・という、ムラの大きな仕出し事業は悩みの一つだったのです。

何かを捨てるなら今、これしかない。1.5億円の穴埋めは、2年以内に実現する!

そう決心して、事例企業のモデリング × 船井総研のコンサルティング支援を受けることを決め、介護施設マーケット開拓に向けた事業構築プロジェクトを社内で発足しました。

Episode.3
目指すは“2年で売上1億円”!全く新しい顧客開拓手法の確立

-新規事業を立ち上げるに当たって、一番苦心されたのはどんなことでしたか?

一番の不安の種だったのは「本当に顧客開拓できるのか?」ということでした。

商品開発については、正直そこまで不安視はしていませんでした。もちろん、これまで作ってきたような産業向けの食事とは異なります。ただ幸いなことに製造スタッフの中で介護施設の勤務経験を持つ者がいたので、なんとかなるイメージはありました。

これまでの、産業給食の顧客開拓は完全なる飛び込み営業でした。しかしそのやり方は、受注確率が高くない上に、需要のないお客様にも売り込むことになるので、仕事を取ってくるために自ら値下げをせざるを得ないということが往々にしてありました。

収益性を上げるために新規事業を立ち上げるのに、これまでと同じ方法で、利益率が低くなる売り方をしては意味が無い。

そんな中で船井総研から提案されたのが、DMやWEBを駆使するダイレクトマーケティングの手法でした。

「買いたい人にだけ売る」過去とは180度違う売り方で主導権を握る

-この時、現場の方が不安そうにしていたのを今でも覚えています。
「これが当たらなかった時、何か他の策はあるんですか?」と(笑)


介護給食事業「スマイルキッチン」立ち上げを機に、新しく作ったHP。今では集客だけでなく、 WEBからお客様の発注を受けることで、事務作業の効率化もできている。

このようなツールを使った、法人を相手にした「販売促進」というのは、ほとんどやったことがなく、未知数でした。

ですが「効率良く、見込みの高いお客様にだけ営業していく」という方針と「アプローチした数に対して一定の確率で見込み案件化、受注ができる」という船井総研の主張を、騙されたつもりで一回信じてやってみようと。

悔しいことに・・・素直に実践したら、本当にほとんど予測通りの結果が出ました。

新規顧客掘り起こしで活躍するDM。年3回ほど、エリアを分けて定期的に発送している。年に1~2回程度内容もブラッシュアップし、回を追うごとに進化し続けている。

初年度3,000万円、2年目1億1,000万円、3年目で3億円。計画対比で常に勝ち続ける理由

-立ち上げ以降、ほぼずっと予算を上回る実績を出され、計画上方修正の連続でした。業績が常に好調に伸びていった要因は、振り返ってみると何だったと思われますか?

私なりに思っていることは、「数値化をとにかく徹底した」ことと、「PDCAを回し続けた」こと。この2つだと考えています。

数値化の目的は、正しい状況把握と評価、そして課題抽出をすること。DMを何通送ったら、何件反響が上がり、見込み案件化できたのか?そのうち何件が受注に至ったのか?販売促進にはいくらお金がかかったのか?投資対効果はどうだったのか?

つい、数字というと「今月はいくら売れたのか?」「いくらコストがかかって結局収支はどうだったのか?」に捕われてしまいがちです。しかし、今のやり方のままで本当に正しいのか?年間スパンでの事業目標達成のために必要なことは何なのか?を正しく知るには、他の指標を持つことが必要です。それを感覚に頼るのではなく定量的に分析することで、軌道修正が常にできていたと思います。

あとはその継続です。「計画」に基づいて「実線」し、振り返って「分析」し、結果を「評価・判断」し、また次の「計画」を決める、の繰り返し。船井総研との会議には、毎回必ず「製造・営業・事務」の各責任者と私が参加しました。各ポジションについて一番理解していて、かつ動かす力を持つ者が、一体になって進められたことも、PDCAが上手く回って言った要因だと思います。

Episode.4
成長の先の新たな「壁」 「九州一番」の更なる飛躍へ

-直近のスマイルキッチン(介護給食サービス)の業績は、実際どの位になっているのでしょうか?

2015年10月にスタートしてからもうすぐ丸三年が経とうという所ですが、食数は1日3,500食を安定して越えるようになりました。月商は2,700万円~2,800万円。直近1年間の累計売上3億円、営業利益率20%の達成が見えています。3年前は全くの0からのスタートでしたが、今では確実に会社の収益源の一つとして、欠かせない事業の一つです。

-「3年で3億円」という、当初社長がこっそり言っていたビジョンが、いよいよ現実のものになってきましたね!素晴らしいです・・・! ・・・が、社長の表情は、晴れ晴れしくないようですが?

まだまだ借金は沢山返さんといかんとです(笑)

スマイルキッチンの実際の売上推移

それと、たしかに業績は伸びてきましたが、目下の悩みは「製造キャパシティの頭打ち」です。兼ねてからの課題だった製造能力ですが、今の工場では物理的に限界を迎えつつあります。

お客様からも、従業員からも選ばれる永続する会社づくりのために

市場のシェア的に見ても、まだまだ伸ばしていく余地はあると思ってますし、今の規模で満足する訳はありません。しかし、伸ばしたくても伸ばせないというのは、機会損失としても大きいですし、ストレスです。この問題解決に向けて、新工場の設立、既存事業のうちいずれかの縮小等、色々な選択肢を思案している所です。

また、現状の介護給食サービス「スマイルキッチン」自体も、まだまだ完成形とは言えません

今は「効率優先」で、自社製造するメニューは一般的な普通食のみ。お客様の大多数はデイサービスやグループホーム等、比較的小中規模の施設様で、自社の対応領域が限られているのが実際です。今後、我々のお客様である「介護施設のお困り事」を解決していくためには、もっと商品力、サービス力の拡充が必要と考えています。

一方で、自社内の労働環境をより健全化していくことも、会社としての重要なテーマです。残業の削減、仕事の偏りの解消など、事業の成長と同時並行で進めていかなければいけません。

未だ九州はおろか、福岡での「一番」シェアにも至らないのが現状です。お客様に向き合い、期待や要望に応えながら、地域で一番信頼され、喜ばれるサービスを目指していきます。
担当者
チームリーダー / マーケティングコンサルタント
吉澤 恒明

近年急成長市場となっている「シニア向けフードビジネス」専門コンサルタント。
 
DMやWEBを駆使したダイレクトマーケティングモデルで、クライアントに対して年間数億円規模の業績アップに貢献。特に、新規事業参入案件の数は過去50件以上。
 
ゼロからの事業戦略構築から計画策定、営業、スキーム構築、販促ツール作成、営業マン強化など、立ち上げから実行、展開までを全面的に支援するのが得意。
 
「おいしい『食』を提供する強い企業づくり」を目指し、年間300日以上をクライアントの支援や行脚に費やす。

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